第二種電気工事士の技能試験に1回落ちて、次で受かった — 工具と練習量の話
PR — この記事にはアフィリエイトリンクを含みます。 紹介している製品は、すべて筆者が実際に購入して使用したものです。 対価を受け取って特定の製品を推奨することはしていません。
白と黒を、間違えた
2024年度下期。筆者は第二種電気工事士の技能試験に落ちました。
学科は同じ回に一発で通っていました。問題は技能です。 作業が終わったのは制限時間ぎりぎりで、見直しをする余裕はまったくありませんでした。 そして提出した作品には、白(接地側)と黒(非接地側)の結線ミスがありました。
極性の間違いは重大欠陥です。他がどれだけ綺麗にできていても、そこで終わります。
半年後の2025年度上期、技能試験を受け直しました。 今度は時間に余裕があり、見直しまでできて、合格しました。
工具は1回目と同じものです。変えたのは練習量だけでした。
この記事は「どの工具を買うべきか」の話ですが、 筆者の結論は「工具より練習用部材の方が合否に効く」です。 落ちた側の実感として、そこを中心に書きます。
この記事が向いていない人
先に外しておきます。
- すでに電気工事の実務経験がある方 — 現場の工具がそのまま使えます。初受験者向けの記事です
- 第一種を受ける方 — より線を扱うため追加の工具が要ります。守備範囲が変わります
- 手先が器用で、作業が速い自信がある方 — この記事は「不器用な人間がどう埋めたか」の話です。参考にならないかもしれません
落ちた原因は、工具ではなく時間だった
1回目に何が起きたかを、もう少し具体的に書きます。
作業自体は最後まで終わりました。終わったのが時間ぎりぎりだったのが問題です。 残り時間が見えている状態で作業すると、手元は焦ります。 そして焦った状態で作った作品は、見直す時間がありません。
白黒の結線ミスは、落ち着いて確認すれば絶対に気づくミスです。 複線図の書き方を知らなかったわけでも、極性の意味を理解していなかったわけでもありません。 確認する時間がなかっただけです。
つまり、技能試験で本当に競っているのは「作れるかどうか」ではなく、 **「見直す時間を残して作り終われるかどうか」**でした。
2回目はここだけを狙って準備しました。結果、時間が余り、見直しができ、受かりました。
工具を選ぶときに見る基準は3つ
基準1: リングスリーブ用圧着工具が「黄色い柄」かどうか
ここだけは間違えると試験当日に詰みます。
技能試験で使うリングスリーブ用の圧着工具は、JIS C 9711 に適合した製品で、柄が黄色です。 似た形の圧着ペンチが多数売られていますが、 柄が赤いものは「裸圧着端子・裸圧着スリーブ用」で、リングスリーブの圧着には使えません。
形がよく似ていて、赤い方が安いこともあるので、知らずに買ってしまう人がいます。 工具セットを買う理由の半分はここで、セットに入っているものは黄色の適合品です。 単品で買うなら HOZAN P-738 のようなリングスリーブ用を選んでください。
【要確認】受験する年度の受験案内で、指定工具の一覧と圧着工具の要件を必ず自分で確認してください。 制度・様式は変わることがあります。
基準2: VVFストリッパーは「時間を買う道具」
技能試験は40分です。そして前述の通り、勝負を分けるのは見直し時間の有無です。
指定工具(ペンチ、プラス・マイナスドライバー、電工ナイフ、スケール、ウォーターポンププライヤ、リングスリーブ用圧着工具)だけでも作業はできます。 ただし外装と絶縁被覆の剥ぎ取りを電工ナイフでやると、 時間も、芯線に傷を入れるリスクも上がります。
VVFストリッパー(HOZAN P-958)は指定工具ではありませんが、持ち込みは認められています。 剥ぎ取りは1つの課題で何十回も発生する工程なので、ここが速くなると効き方が大きいです。
工具セットを買うなら、これが最初から入っている DK-28 を選ぶ方が結局は安く済みます。
基準3: 練習量が、そのまま時間の余裕になる(本題)
筆者は手先がとても器用とは言えません。だからこそ練習量が要ると判断しました。
技能試験は候補問題13問が事前に公表され、その中から1問が出題されます。 13問すべてを一度作れば、当日は初見の作業が出てきません。 しかし1周しただけでは、筆者の場合「作れる」止まりで、速くはなりませんでした。
2周目でようやく手が慣れて、時間に余裕が生まれました。
問題は、練習にはケーブルという消耗品が要ることです。 DK-51 のような「1回用」の部材セットは、13問を1周できる分量で構成されています。
1回用のセットで2周する方法
筆者は1回用の部材を、やりくりして2周させました。やったことは単純です。
- 一度使ったケーブルの端を切り落として、もう一度被覆を剥き直す
- 器具(スイッチ、コンセント、ランプレセプタクル等)は消耗しないので、そのまま使い回す
- ケーブルが短くなった分は、寸法の指定が緩い部分に回す
1回用でも部材には少し余裕があるので、この方法で2周は現実的に回せます。 ただし2周目のケーブルは短くなっているため、寸法通りの練習にはなりません。 「手を慣らす」目的なら十分ですが、「本番と同じ条件で通す」練習にはならない、という割り切りが要ります。
2回用を買えば、この手間ごと消えます。 1万円台後半を追加で払って、 やりくりの時間と「寸法が本番と違う」という不安を消すかどうか、という選択です。
比較表
| 選択肢 | 価格帯 | 圧着工具 | VVFストリッパー | 候補問題の解説 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|---|
| HOZAN DK-28 工具セット | 1万円台前半 | 黄色・適合品 | あり(P-958) | あり | 初受験の大半。迷うならこれ |
| HOZAN DK-29 工具セット | 1万円弱 | 黄色・適合品 | なし | 製品による | ナイフ作業に慣れている人 |
| ノーブランドの安価セット | 数千円 | 要確認 | 製品による | なし | 工具の目利きができる人 |
| バラ買い(P-958 / P-738 など) | 変動 | 自分で選ぶ | 自分で選ぶ | なし | すでに一部持っている人 |
| 練習用部材 1回用 DK-51 | 1万円台後半 | — | — | ハンドブック付き | やりくりして2周できる人 |
| 練習用部材 2回用 DK-52 | 2〜3万円台 | — | — | 同上 | 手間を金で消したい人 |
価格は購入時点のもので、変動します。型番と対応年度は購入前に必ず確認してください。
個別に見ていく
HOZAN 技能試験用工具セット(DK-28)
購入時 11,604円。1回目・2回目とも同じものを使いました。
良い点
- 指定工具が漏れなく入っていて、圧着工具が適合品かを自分で確認する手間がない
- P-958 が最初から入っている
- 候補問題13問の解説が付くので、別途テキストを買わずに練習に入れる
気になる点
- 単品で買い集めるより数千円高くつく場合がある
- すでにドライバーやペンチを持っている人には重複が出る
- 試験後に使い道が限られる工具がある(電工ナイフなど)
向いている人: 初受験で工具を持っていない人。
なお筆者は、1回目の不合格の原因は工具ではありませんでした。 工具セットは「これで落ちた」ものではなく、「これで受かった」ものでもある、という位置づけです。
練習用部材 DK-51(1回用)
購入時 17,497円。
良い点
- 13問分の材料が計算済みで揃っていて、買い出しの手間がゼロ
- ハンドブックがあるので複線図の書き方から確認できる
- 器具は消耗しないため、2周目にそのまま使える
- 少し余裕があるので、やりくりすれば2周できる
気になる点
- ケーブルは消耗品。素直に使えば1周で無くなる
- 2周目は寸法が本番通りにならない
- 保管に場所を取る
- 工具セットと合わせて約3万円。受験料を含めた総額は小さくない
向いている人: 独学の人。手間をかけてでも費用を抑えたい人。
試験には要らなかったもの(正直に)
筆者が後から買った工具のうち、技能試験には不要だったものを挙げておきます。
- 裸圧着端子・裸圧着スリーブ用の圧着ペンチ(赤柄) — 電子工作・配線加工用。リングスリーブには使えません
- オープンバレル型コンタクト用の圧着ペンチ — コネクタ端子用。試験とは無関係
- より線用ワイヤーストリッパ — 第一種で必要になるもの。第二種では出番がありません
「圧着ペンチ」という同じ名前で全く別の工具が売られています。 試験対策として買うなら、リングスリーブ用(黄色)であることだけを見てください。
使い方別のおすすめ
手先に自信がない / 不器用な自覚がある 工具セット + 練習用部材。2周できる量を確保してください。 1回用をやりくりして2周するか、素直に2回用を買うかは、手間と1万円台後半のどちらを取るかです。 筆者は前者でしたが、時間に余裕がある人は後者の方が確実だと思います。
技能で一度落ちた 学科が免除される回があるはずなので、まず受験案内で自分の免除条件を確認してください。 そのうえで、工具を買い替えるより練習量を増やす方を勧めます。 筆者が2回目に変えたのはそこだけでした。
作業が速い自信がある 1回用で1周し、時間を計って本番形式で通してみてください。 40分に対して見直しの時間が残るかが判断基準です。残らないなら、周回を増やす価値があります。
合格後も電気工事を続ける予定 セットで揃えて問題ありません。
練習中に足りなくなるもの
工具セットと練習用部材を買っても、練習していると途中で足りなくなるものがあります。 どれも単品で買い足せます。
- VVFケーブル 1.6mm 2芯 — 一番早く無くなります。やりくりで2周する場合も、 これだけ買い足せば寸法通りの練習に戻せます
- リングスリーブ E形 — 圧着はやり直しが効きません。潰したら終わりなので、 練習では想定より多く消費します。100個入りを1つ持っておくと安心です
- P-958 VVFストリッパー — 基本セット(DK-29)を買った人が後から足す場合
- P-738 圧着工具 — 手持ちの圧着ペンチが赤柄だった場合の買い直し
リングスリーブは特に軽視されがちですが、圧着ミスは重大欠陥に直結します。 本番で一発勝負にしないために、練習で潰す前提の数を用意しておく価値があります。
まとめ
- 技能試験で競っているのは「作れるか」ではなく**「見直す時間を残して作り終われるか」**
- 圧着工具は黄色(リングスリーブ用)。赤は別物
- VVFストリッパーは指定工具ではないが、時間を買う道具として価値がある
- 工具より練習量。 筆者は工具を変えずに、練習量だけ変えて受かった
- 1回用の部材でも、端を切り落として剥き直せば2周できる。手間を消したいなら2回用
不器用でも、時間の余裕さえ作れれば見直しができます。 見直しができれば、白と黒を間違えたまま提出することもありません。