クランプメータを買って最初にやる失敗 — HIOKI 3280-10F
PR — この記事にはアフィリエイトリンクを含みます。 レビューしている製品は、筆者が実際に購入して使用したものです。 使っていない製品に触れる場合は、その旨を明記します。 対価を受け取って特定の製品を推奨することはしていません。
資格を取っても、測れなければ分からない
第二種電気工事士を取ると、自分で配線をいじれるようになります。 しかし測る道具がないと、正しくできたのかどうかが分かりません。
「ブレーカーが落ちるほどではないが、この系統にどれくらい流れているのか」 「この機器は実際に何A引いているのか」 こうした疑問は、テスターだけでは答えられません。
そこで HIOKI(日置電機)の AC クランプメータ 3280-10F(購入時 7,134円)を買いました。 一緒に Cleqee のテストリード(1000V / 15A、ワニ口クリップ付き、購入時 1,545円)も揃えています。
この記事は、買って最初にやる失敗の話から始めます。
この記事が向いていない人
- 測定器を仕事で使う方 — 業務で使うなら、測定カテゴリと校正の話が先に来ます。この記事の範囲外です
- インバータ機器の電流を正確に測りたい方 — 後述しますが、この機種の方式では誤差が出ます
- 電圧だけ測れれば十分な方 — テスターで足ります。クランプメータは要りません
最初にやる失敗:「挟んでも 0 を指す」
クランプメータを手にして最初にやることは、たいてい **「延長コードを挟んでみる」か「VVFケーブルを挟んでみる」**です。
そして、0 を指します。
故障ではありません。そういう原理です。
クランプメータは、電線の周りに生じる磁界を測っています。 一般的なケーブルには行きと帰りの2本(またはそれ以上)の線が入っていて、 電流の向きが逆なので、磁界が打ち消し合います。合計するとゼロになる。
正しく測るには、測りたい線を1本だけ挟む必要があります。
- 延長コードや VVF ケーブルは、外装の中に複数の線が入っている → 挟んでも 0
- 分電盤の中で分岐した先の1本、あるいは機器内部で単線になっている箇所 → 測れる
「ケーブルを挟むだけで電流が分かる便利な道具」と思って買うと、 最初の5分で「壊れているのでは」と思うことになります。
分電盤の内部を触る作業には資格が要ります。 通電中の充電部に近づく作業には相応の危険があるので、 有資格者であっても、感電と短絡のリスクを理解したうえで行ってください。
選ぶときに見る3点
1. 平均値方式か、真の実効値(True RMS)か
価格帯を分ける最大の要因がここです。
- 平均値方式 — 波形がきれいな正弦波である前提で、平均値から実効値を換算する
- 真の実効値(True RMS) — 波形が歪んでいても正しい実効値を出す
家庭やオフィスの機器は、きれいな正弦波を引いていないものが多いのが実情です。 インバータ制御のエアコン、LED照明、スイッチング電源(PCやACアダプタ)などは 電流波形が歪んでいて、平均値方式では誤差が出ます。
3280-10F は平均値方式です。 それでも選んだのは、用途が「だいたいどれくらい流れているか」を把握することだったからです。 モーター負荷や白熱電球のような素直な負荷なら実用上の問題は感じません。
インバータ機器の消費電流を数字として信用したいなら、最初から真の実効値のモデルを買ってください。 後から買い直すことになります。
2. 測定レンジと、口の開き
3280-10F は AC 1000A まで測れます。 家庭用途では明らかに過剰ですが、レンジが広くて困ることはありません。
むしろ実用で効くのはクランプ部の開口径です。 太い幹線を挟めるか、狭い分電盤の中で口を開けられるか。 カタログの最大電流だけ見て、物理的に挟めないという失敗があり得ます。
3. 本体の薄さ
地味ですが、分電盤の中で使うなら本体形状が効きます。 奥まった場所の1本を挟むとき、厚みのある本体だと手が入りません。
3280-10F はこのシリーズが薄型で知られているモデルです。 測定性能の話ではありませんが、使う場所を考えると無視できない要素でした。
テストリードは別途考える
クランプメータは電流を挟んで測りますが、電圧を測るにはリードが要ります。
付属のリードは棒状のプローブで、両手で押さえる必要があります。 測りながらメモを取る、あるいは測りながら別の操作をする、という場面では手が足りません。
そこで ワニ口クリップ付きのテストリードを別途用意しました。 挟んで固定できるので、両手が空きます。
選ぶときに見るのは定格です。1000V / 15A のように電圧と電流の上限が書かれています。 それに加えて、業務で使うなら CAT II / III / IV という測定カテゴリの表記を確認してください。 これは「どこで測るか」に応じた安全設計の等級で、 コンセントの先で使うのか、分電盤で使うのか、引込線で使うのかによって要求が変わります。
安いリードには、この表記が無いことがあります。 価格だけで選ぶ部分ではありません。
比較表
| 選択肢 | 価格帯 | 方式 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 安価なクランプメータ | 2〜4千円 | 平均値(表記が無いことも) | とりあえず流れているか見たいだけの人 |
| HIOKI 3280-10F | 7千円前後 | 平均値方式 | 家庭・自宅ラボで大まかな電流を把握したい人 |
| 真の実効値モデル | 1万5千円〜 | True RMS | インバータ機器を正確に測りたい人。業務利用 |
| テストリード(ワニ口付き) | 1〜2千円 | — | 両手を空けたい人。定格表記を必ず確認 |
価格は購入時点のもので、変動します。
HIOKI 3280-10F を使ってみて
良い点
- 国内メーカーで、表示と操作が素直。マニュアルを読まなくても電流が測れる
- 薄型で、狭い場所に入る
- 1000A レンジまであるので、測定対象を選ばない
- 7千円台で、この安心感は妥当だと感じている
気になる点
- 平均値方式。インバータ機器の測定値は参考値として扱う必要がある
- AC 専用。直流は測れません。DC も測りたいなら別のモデルが要ります
- 付属リードだけでは手が足りない場面がある(上記の通り、別途用意しました)
向いている人: 資格を取った後、自宅や自作機材の電流を把握したい人。 正確な測定ではなく把握が目的なら、この価格帯で十分だと思います。
まとめ
- ケーブルをまとめて挟むと 0 を指す。 測るのは1本だけ。これを知らないと故障を疑う
- 平均値方式か真の実効値かが価格帯を分ける。インバータ機器を正確に測るなら後者
- 最大電流より、クランプ部の開口径と本体の薄さが実用では効く
- テストリードは別途。ワニ口で両手が空く。定格と測定カテゴリの表記を確認する
- AC 専用モデルは直流が測れない。買う前に用途を確認する
資格の勉強では計算問題として電流を扱いますが、 実際に測ってみると、思っていた値と違うことがよくあります。 その差を確認できるようになるのが、測定器を持つ意味だと思っています。
関連: 第二種電気工事士の技能試験に1回落ちて、次で受かった / 30Wの温調なしはんだごてで詰まって、HAKKO FX600 に替えた